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昨年末から400件 7割が県外

 親が育てられない赤ちゃんを託す「赤ちゃんポスト」(こうのとりのゆりかご)を今年5月に開設した熊本市の慈恵病院(蓮田晶一院長)が、これに先行して始めた相談窓口に電話が殺到している。

 望まない妊娠をしたという若者や未婚者の悩みが多く、昨年末からこれまでに400件を超えた。その7割が熊本県外からで、全国的に悩みの受け皿が不足している実態が浮き彫りになっている。(生活情報部 榊原智子)

もう一つの反響
 同病院はプライバシー保護を理由に、保護件数について公表していないが、関係者の話から、これまでに7人の乳幼児が預けられたことがわかっている(うち1人は親に引き取られた)。

 「赤ちゃんの遺棄」をめぐり、全国で反響を呼んでいるが、同病院にとっては、職員が不眠不休で対応に追われる“もう一つの反響”があった。

 預けられる子どもが現れないようにと、「ゆりかご」設置に先行して昨年12月に始めた24時間対応の電話相談「SOS赤ちゃんとお母さんの相談窓口」に寄せられた悩みの声だ。

 「もう赤ちゃんが生まれそう。助けて下さい!」

 電話口の向こうから、陣痛が始まりパニックを起こした声。妊娠を親にも告げられず、出産間際にかけてきた女子高校生だった。

 「よく電話してくれたね。すぐ行くから待っていて」。電話を受けた病院の担当者は車で駆けつけ、生まれた赤ちゃんと母親を病院に収容。家に連絡すると、「そんなことがあるはずはない」と、娘の変化に気付かなかった親は絶句した。

 「このようなケースがこれまで3件ある。自分たちで行けない地域の場合、近くの知人に連絡し、助けに走ってもらった」と、同病院の田尻由貴子看護部長は振り返る。

 「ゆりかご」が全国的なニュースになったこともあり、「妊娠を親にも言えない」「中絶費用が工面できないまま臨月になった」「婚約者がいなくなり、産み育てるお金もない」などの深刻な相談が殺到。若い世代にとって身近な相談相手や窓口がないことがうかがえ、「『ここなら助けてくれるのでは』とかけてくる人が多かった」と関係者は言う。8月末までに400件以上を数え、7割は県外から。北海道から沖縄まであった。

 相談を受けた中には、親の育てられない事情を考慮し、身元を確認したうえで特別養子縁組で送り出した子どもも10人近くいる。

悩みの受け皿不足
「助けてくれない」
 「ゆりかご」開設と同時に、地元の熊本市も市町村で初めて24時間の「妊娠の悩み相談電話」を始めた。3か月で301件が寄せられ、こちらも8割が「望まない妊娠をした」「産みたくても育てられない」という悩みだった。市の担当者は「これほど相談が多いとは予想しなかった。悩みの受け皿が全国で不足している」と話す。

 妊娠や出産に悩む人に対しては、都道府県や政令市の児童相談所や、市町村の保健センター、女性健康支援センターなどの相談窓口があるが、広く知られているとは言えない。

 ドイツには公的な「妊娠葛藤(かっとう)相談所」があるが、日本では、望まない妊娠をした人に対する援助は、「国でやっているのは全国4か所の無料相談事業など。足りない出産費用の支援や母子支援などは行っていない」と厚生労働省は説明する。

 悩みの受け皿の不足は、同病院の相談からもうかがえる。「児童相談所に相談したが『あなたが育てるしかないでしょう』と突き放された」「役所でたらい回しにされ、何も助けてもらえなかった」などと訴える人が目立つからだ。

 熊本県と熊本市は8月、「ゆりかご」の運用や相談の状況を検証する組織を作ることを決めた。同市担当者は「インターネットで知った全国の人から市の窓口に相談がある。熊本だけの問題ではないことを、国にも考えてもらいたい」と話す。

 赤ちゃんポスト 子育てできない親が赤ちゃんを匿名で預けることができる施設。ドイツには約80か所あり、それをモデルに慈恵病院が全国で初めて設置。病院の外壁にあるドアを開けて赤ちゃんを置くと、職員が駆けつける仕組み。

相次ぐ遺棄・殺人
 望まない妊娠をした未成年者などが、新生児を殺したり捨てたりする事件が相次いでいる。背景には、性交渉の若年化や未婚者の妊娠の広がりがある。16~19歳の女子高校生が性交渉を経験する割合は過去20年で急増、厚労省の研究調査によると2006年度には28・3%に。19歳で1・7%が人工妊娠中絶を経験したというデータもある。児童虐待を検証した同省の専門委員会は今年6月、3歳未満児の虐待死の25%が「望まない妊娠」が原因との報告をまとめた。

今年の主な新生児遺棄事件(年齢は当時)
 1月 千葉県白井市の実家で出産した無職少女(18)が乳児の頭部を殴って殺害、雑木林に捨てた。

 1月 北九州市の無職女性(22)が自宅で出産した男児を浴槽で水死させ、ごみ焼き用ドラム缶に捨てた。

 2月 群馬県高崎市のアルバイト少女(19)が自宅トイレで出産。放置して5時間後に女児を窒息死させた。

 4月 奈良市の女子高校生(16)が自宅の浴室で男児を出産。義理の妹が歯科医院の敷地に置き去りに。

 5月 東京・豊島区で袋に入れられ、放置された女児が保護される。

 6月 宮城県石巻市の女子高校生(15)が自宅で女児を出産。遺体を袋に入れて押し入れに隠した。

 6月 新潟県長岡市の女子高校生(18)が校内のトイレで出産。男児は死亡。

「小さな命」を守るために
 赤ちゃんを預けにきて、迷っているところを看護師に声をかけられ、思いとどまった母親もいたという。相談室で悩みを受け止めてもらい、支援制度も紹介され、もう一度育児する気持ちになった人も少なくないそうだ。

 波紋を広げている「ゆりかご」だが、気づいたのは「授かった小さな命」に対し、私たちの社会が必ずしも温かいとはいえない現実だ。性や命の教育、避妊法の伝授、妊娠した際の支援――。やるべきことはたくさんある。

出典:読売新聞


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